道路には公道と私道の2種類があります。特に私道は、個人が所有している道のため、何かとトラブルが多いのが現状です。
そして私道に関して「近隣住民とできるだけトラブルを起こしたくない」「近隣住民とのトラブルで悩みたくない」という方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、私道に関してトラブルを抱えている戸建てオーナー様のために、私道と公道の違いや私道の特徴、私道の場合に確認すべきポイントや私道のトラブル事例について詳しく解説します。
公道とは
公道は法律で定義された名称ではなく、国や地方公共団体が所有し、管理している道路のことです。
- •県道
- •国道
- •農道
- •林道
上記の道が「公道」という扱いになります。
なお不動産売買において公道は、非常に重要な役割をになっています。なぜなら、建築の可否や、住宅ローンの審査に大きな影響を与えることになるからです。
そのため、購入する不動産が「公道に接しているかどうか」は必ずチェックすべき項目といえます。
私道とは
私道は「個人」が所有している道路です。
私道についても法律用語ではなく「公道ではない道路」として一般的に使用されます。しかし、私道はあくまでも「個人の所有物」になるため、原則通行できるのは所有者のみです。そのため、私道に正当な理由なく侵入した場合、不法侵入になってしまいます。さらに以下の場合、私道の所有者からの許可が必要です。
- •上下水道を埋設するための道路掘削工事
- •道路の修繕
このように、公道と私道の2つの道路は取り扱いが全く異なります。
- •公共物としての道路である公道
- •私物である私道
2つの道路の基本的な特徴は、事前に知っておくべきポイントです。
道路には公道と私道の2種類がある
公道は、建築基準法において5つに分類されており、定義付けされています。
また、私道については単独所有している場合や共有である場合があり、通行許可を取得する際には全員の承諾を得る必要があるため、注意が必要です。
このように、公道と私道にはそれぞれ注意すべき特徴があるため、この章で詳しく解説します。
公道の種類
公道は建築基準法第42条において、道路の幅員や成り立ちなどによって次のように分けられ、管理されています。
42条一項1号
1号道路の定義は、次のようになります。
道路法(昭和二十七年法律第百八十号)による道路
この道路は代表的な「公道」となり、道路法上の制限が最も軽い道路といえます。
そのため、1号道路は土地を購入し建築物を建造する上で手間がかからず、接道要件としてもリスクが低い道路です。
なお、道路法における道路は原則4m以上の幅員となっており、1号道路として認定される際の必須条件でもあります。
42条一項2号
2号道路の定義は、次の通りです。
都市計画法、土地区画整理法(昭和二十九年法律第百十九号)、旧住宅地造成事業に関する法律(昭和三十九年法律第百六十号)、都市再開発法(昭和四十四年法律第三十八号)、新都市基盤整備法(昭和四十七年法律第八十六号)、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法(昭和五十年法律第六十七号)又は密集市街地整備法(第六章に限る。以下この項において同じ。)による道路
2号道路はいわゆる「開発道路」と呼ばれており、都市計画法や土地区画整理法などに基づく開発が施工され、設置された道路が対象になります。
こうして作られた道路は2号道路となり、基本的に6m以上の幅員が義務づけられています。
なお、2号道路は開発当初は私道という扱いで開発業者が所有しており、開発の検査済証が発行された段階で行政に寄贈し、1号道路として認定されるのが一般的です。
つまり、住宅ローン審査や建築許可という点においては、1号道路と同じ扱いになるといえます。
42条一項3号
3号道路の定義は、次のようになります。
都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に存在する道路
3号道路はいわゆる「既存道路」と呼ばれる道路のことで、建築基準法が制定されるよりも前に存在した4m以上の道路です。
建築基準法では3号道路として取り扱いし、2m以上の接道要件が満たされていれば問題なく建築することができます。
ただし、3号道路は昭和25年よりも前から存在しているため、私道であることも多いです。
つまり、公道ではなく私道の3号道路である場合は所有者を特定し、上下水の埋設や通行許可など様々な許可を取得する必要があるため、注意が必要です。
42条一項4号
4号道路の定義は、次のようになります。
道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法による新設又は変更の事業計画のある道路で、二年以内にその事業が執行される予定のものとして特定行政庁が指定したもの
4号道路は「計画道路」のことで、現存している道路を拡幅したり田畑を買収し、新しく設置される予定の道路となります。
この道路は利便性の良い街づくりを目的として設置され、完成後は1号道路として取り扱われます。
このことからも、4号道路はあくまでも「事業計画が遂行している間にのみ使われる名称」ということになります。
42条一項5号
5号道路の定義は、次の通りです。
土地を建築物の敷地として利用するため、道路法、都市計画法、土地区画整理法、都市再開発法、新都市基盤整備法、大都市地域における住宅及び住宅地の供給の促進に関する特別措置法又は密集市街地整備法によらないで築造する政令で定める基準に適合する道で、これを築造しようとする者が特定行政庁からその位置の指定を受けたもの
5号道路は「位置指定道路」と呼ばれており、開発許可を必要としない宅地分譲において、接道義務を満たすための道路となります。
また複数の住民が居住するために、土地を区割した際に設置した道路も5号道路となり、市区町村から認定されることで接道要件を満たすことができます。
なお、こうした道路は市区町村に寄贈することで1号道路とすることができますが、現実的に寄贈を却下されることも多く、5号道路のままでは所有者が自己管理するための費用がかかります。
そのため、5号道路に接道する土地を売買する際には、管理方法についての取り決めを調べておくことが重要といえます。
42条二項道路
42条2項道路の定義は、次の通りです。
都市計画区域若しくは準都市計画区域の指定若しくは変更又は第六十八条の九第一項の規定に基づく条例の制定若しくは改正によりこの章の規定が適用されるに至つた際現に建築物が立ち並んでいる幅員四メートル未満の道で、特定行政庁の指定したものは、前項の規定にかかわらず、同項の道路とみなし、その中心線からの水平距離二メートル(同項の規定により指定された区域内においては、三メートル(特定行政庁が周囲の状況により避難及び通行の安全上支障がないと認める場合は、二メートル)。以下この項及び次項において同じ。)の線をその道路の境界線とみなす。ただし、当該道がその中心線からの水平距離二メートル未満で崖地、川、線路敷地その他これらに類するものに沿う場合においては、当該崖地等の道の側の境界線及びその境界線から道の側に水平距離四メートルの線をその道路の境界線とみなす。
42条2項道路は「みなし道路」とも呼ばれたりします。建築基準法の改正により、道路の幅員が4m以上・6m以上と定められ、現に立ち並んでいる建物の前面の道路幅員が4m未満のものも多く存在するため、特定行政庁が指定した道路に関しては道路としてみなすと規定しています。
ただし、4m・6m未満の道路に関しては、道路の中心線から両端に水平距離で2mもしくは3m、片側が崖・河川・線路などこれに類するものに沿う場合には、反対側の道路境界線より4mまでを道路とみなすこととしています。
これにより、4m・6m未満の道路に接している建物は再建築不可ではありませんが、建て替えなどをする際には、現在の敷地を道路用地として後退させなければ建て替えができません。
これをセットバックと言います。
私道には「分筆」されているものと「共有」のものがある
私道の所有者は必ず1人というわけではなく、共有名義であることもあります。
その場合、私道に関する許可は名義人全員から取得する必要があるため、注意が必要です。
また、私道と公道は見た目の違いがないものの、所有権上は次のように分けられていることがあります。
分筆されている私道
たとえば4m以上の道路に複数の宅地が接道しているように見えても、実際には4つに分筆されておりそれぞれに所有者がいるケースがあります。
この場合は、売買する土地と接道している私道の所有者にコンタクトを取ることになりますが、他の私道所有者と覚書が締結されていることがほとんどです。
つまり、土地の売買を円滑に進めるためには、覚書の内容をチェックする必要があるといえます。
共有の私道
分筆されていない共有の私道は、既存道路もしくは位置指定道路であることが多いです。しかし、接道している土地所有者と私道の所有者が全くの別人というケースもあります。
このような道路に接道している場合は、住宅ローン審査が厳しくなる傾向にあり、金融機関が指定した書類に道路所有者が記名押印することが、融資条件となることもあります。
そのため共有私道の場合、所有者が特定できず、売買契約が白紙解除になることも考えられるため、慎重に進めることがおすすめです。
よくある私道のパターン
現存している私道の多くは、既存道路もしくは位置指定道路です。
これらの道路は古くから形成された街に多く見ることができるため、融資が通る私道であれば不動産売買においては特殊な道路ではないといえます。
そのため、不動産売買を検討する際には前面道路の所有者を確認した上で、市区町村で道路の分類を調べてもらうことが、ポイントとなります。
公道と私道の見分け方は?
公道と私道を見分けるためには、所有者を確認するか市区町村に調べてもらうことが必要です。
この章では、それぞれの方法について解説します。
道路管理課で確認する
市区町村の役場には「道路管理課」や「維持管理課」と呼ばれる部署があり、道路法に該当する道路を管理しています。
そのため、これらの部署に地図を持参することで、指定した道路がどのような取り扱いになっているのかを調べることが可能です。
ただし、公道であっても「県道」の場合は市区町村とは別の管轄となり、所定の管轄まで出向くことになることを、知っておきましょう。
なお、市区町村が管理する道路についてはネットに公開されているシステムを使って調べることも可能です。
登記簿謄本で確認する
最寄りの法務局で登記簿謄本(全部事項証明書)を取得し、所有者を確認することで公道か私道かを調べることができます。
この場合は地番を調べておく必要がありますが、法務局に備え付けられているブルーマップで確認が可能です。
ただし、登記簿謄本には登記名義人と住所が記載されており、相続などで所有者が変わったにもかかわらず登記がされていないケースも多くあります。
さらに共有名義の私道である場合は、全員分の謄本を取得することになるため、手間と費用がかかり大変です。
公図で確認する
法務局では謄本だけでなく、土地の形状や地番を表示している公図を取得することもできます。そして前面道路に複数の地番が割り振られている場合は、私道である可能性が高いでしょう。
そこで、公図をまず取得してから地番を調べ、その上で所有者を謄本で調べることで、漏れなく登記名義人を確認することができます。
道路が私道の場合に確認するべき事項
家の土地が私道に接道している場合、トラブルを防止するためにも次の事項を確認する必要があります。
その私道に持ち分があるか
接道している私道に持分がなく土地所有者と別名義の場合は、既存道路でない限り「未接道の道路」となります。
この場合、私道所有者から利用の承諾を得ているという覚書を取得する必要があり、取得できない場合は住宅ローン審査がおりない可能性が高いです。
そのため、私道と土地の所有者との関係性や覚書の有無は、必ず確認しておきましょう。
その私道に税金や維持管理費がかかるのか
私道は個人の所有物であるため、固定資産税や維持管理するための費用がかかります。
そこで、事前に税額と費用を調べておく必要がありますが、私道が共有である場合、維持管理は都度話し合いで決めることがほとんどです。
つまり、道路が修繕すべき状況だったとしても、他の共有者が「修繕の必要なし」と判断すれば修繕できないことになるため、注意が必要です。
その私道に通行掘削承諾書があるのか
通行掘削承諾書とは、私道に上下水道を埋設したり私道を通行したりするための許可書のことです。
この許可書があれば、正式に私道名義人から利用の許可を得ていることになるため、住宅ローン審査や建築許可を得ることができます。
このことから、前面道路が私道と判明した場合は、まず通行掘削許可書の有無を確認すべきです。
私道負担とは?
私道負担とは、敷地の一部を道路として扱う「みなし道路」の場合に使われる用語です。
建築用語では「セットバック」と呼ばれますが、不動産売買をする上では頻繁に見かける用語です。
そこで、この章ではセットバックと、セットバックした場合の税金について解説します。
セットバック
セットバックとは、前面道路が4m未満の場合に、道路中心線から指定のラインまで道路境界線をバックさせるというルールです。
この場合、敷地の一部がみなし道路という扱いになり、フェンスやコンクリートブロックなどの建造物を設置することはできません。
そのため、前面道路が4m未満である場合、敷地を全て利用できるわけではないことを、知っておきましょう。
セットバックした場合の税金は?
セットバックした部分は道路となりますが、土地の所有者が固定資産税を支払う必要があります。
ただし、市区町村に寄贈したり、固定資産税非課税申請を提出し受理されれば、支払い義務は免除となります。
つまり、セットバックをする際にはセットバック部分の取り扱いについても、協議しておく必要があるといえます。
私道のトラブル事例
この章では、私道に関するトラブル事例について解説します。
私道は公道とは違い、所有者は個人です。
そのため、世代交代によって当初のルールが忘れられ、その結果トラブルに発展することも少なくありません。
そこで、このようなトラブルに巻き込まれないためにも、この章で解説する事例を参考にしてください。
ライフラインの埋設トラブル
通行掘削承諾書があれば、上下水道やガス管などのライフラインを埋設することができますが、承諾書を紛失していたり私道の相続人が承諾書を把握していないことで、意見の相違が発生することもあります。
このようなトラブルは訴訟まで発展することも少なくないため、慎重に進めることが必要です。
違法駐車トラブル
私道は個人の所有物であるため、所有者が私道に駐車するトラブルが起こることもありますが、厳密には「違法」駐車ではありません。
また、苦情を申し立てた場合は私道所有者との関係性が悪化し、私道の利用に影響が出てしまう可能性もあります。
そのため、泣き寝入りする土地所有者も多いトラブル事例です。
そこで、このようなケースでは承諾書の内容を確認し、円滑な通行の妨げになっていることを私道所有者に申し立てることがおすすめです。
植栽などのトラブル
私道上にある植栽が放置され、通行の妨げになっていたとしても、植栽も含めて個人の所有物である以上、許可なく伐採することはできません。
万が一伐採した場合、器物損壊罪として訴えられる可能性もあるため、注意が必要です。
このような場合には、私道所有者に伐採の依頼をしますが、さらに悪化してしまい「完全に通行できない状況」になってしまう恐れもあります。トラブルが大きくなる前に、役場などの行政機関に相談してみましょう。
私道に通行禁止看板は設置可能か?
私道は個人の所有物であることから、原則はどのような看板の設置も可能です。
ただし、周辺の情景を乱すような奇抜なデザインや、風俗の観点から問題がある場合には市区町村から撤去の指示がでることもあります。
- •「この先私有地の為通行不可」
- •「私有地の為立ち入り禁止」
- •「この先私有地のため通り抜けできません」
上記のような、シンプルで分かりやすい看板にすることがおすすめです。
まとめ
私道は公道と違い、個人間でのさまざまなトラブルがつきものです。
そのため、この記事で解説した「私道の特徴」を知っておくことでトラブルを避けられることもあります。私道に関しての正確な知識をしっかりと得ておきましょう。
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